ネッビオーロの不思議。東京ワイン会【by K】

先日開催された、第三回東京ワイン会に参加してきました。
今回のテーマは『ネッビオーロ』です!

 

ネッビオーロといえば、もう説明は不要ですよね。
バローロ、バルバレスコ、そして少し珍しいですがスフォルツァート・ディ・ヴァルテリーナという偉大なるワインを生み出す葡萄です。

 

今回テイスティングしたのは下の6種類。

1.バルバレスコ・リゼルヴァ 2006/ テッレ・デル・バローロ…古典
2.バルバレスコ・ガイア・プリンチペ・リセルヴァ 2006/ ロベルト・サロット…モダン
3.バローロ・リゼルヴァ 2005/ テッレ・デル・バローロ…古典
4.バローロ・リゼルヴァ・アウダーチェ 2006/ ロベルト・サロット…モダン
5.ヴァルテリーナ・スフォルツァート 2005/ ネラ…モダン
6.ヴァルテリーナ・スフォルツァート・メッセーレ 2001/ カーヴェン…モダン

 

うーん、これだけ揃うと壮観ですね~。
ネッビオーロに絞ったテイスティング会はあまりないので、楽しんで試飲してきました!
そして今回さらにおもしろかったのが、古典派とモダン派の比較もできたことです(上記ワイン名に「古典」「モダン」と記載)。

 

これから、古典派とモダン派の違いを簡単に説明したいと思いますが、
前提としておさえておきたいのが、『ネッビオーロ』ってやつがとっても気難しくて、めんどくさいやつだってこと。
そもそも北イタリアの風土にしか合わないし、酸味とタンニンが強く、若いうちはとても飲めたもんじゃないのです。
しかしそれが熟成されてくると…あの偉大なるバローロ・バルバレスコを生み出します。

 

一言で言うと、気難しさ(酸味)と熟成(タンニン)の葡萄かな。

ブルゴーニュのピノノワールと相通じるものがありますね~。
でも両方とも、もし人間だったら恋人にはしたくても、結婚はしたくない感じもしますが 笑

それを踏まえて。

 

【古典派】
気難しい放蕩息子(ネッビオーロ)を田舎でのびの~び育てて、本来のポテンシャルを十分に引き出して作ったワイン。
具体的な製法と特徴は
・1~2ヶ月といった長期間のマセレーションに大樽を使用し数年にわたって長期熟成。
(これで酸味とタンニンのバランスを整える)
・酸化した色合いと風味が特徴で、樽香は控えめ。
(長期熟成の特徴)
です。
これで出来上がると、放蕩息子は見事に柔和な面持ちであごひげを蓄えた紳士に変化します。

 

【モダン派】
気難しい放蕩息子(ネッビオーロ)を若いうちに海外留学させて、本来のポテンシャル以外の要素を付け加えて作ったようなワイン。
具体的な製法と特徴は
・1~2週間での短期間マセレーション、新樽率をあげた小樽(バリック)を使用。
(バリックを使用することで短期間で酸味・タンニンが抑えられる)
・その結果、鮮やかでフレッシュ、樽の複雑味と果実味、凝縮感に溢れるワインになる。
です。
この場合、紳士というよりもバリバリの若手ビジネスマンって感じですね。

 

これらを踏まえて、さっそく試飲!

今回は僕の印象に残った3本についてコメントさせていただきます。

 

◆3.バローロ・リゼルヴァ 2005/ テッレ・デル・バローロ…古典
もともと超めんどくさいブルゴーニュのピノを愛する僕としては、今回の中で一番好きなワインでした。
いわゆる「肌(口?)に合うワイン」という感じです。
色合いはややガーネットがかった紫で、熟成を感じさせます。香りはそんなに枯れておらず、まだ葡萄の瑞々しさを感じられるほど。特徴であるスミレの香りはあまり感じず、とてもバランスのよい印象です。

味わいは…やはり旨い!
口の中で旨味がじわじわとひろがります。古典派の、このじわじわ感が好きなんですよねー。
小売価格3,600円とはとてえも思えません。
古典派のよいところを知るにはうってつけの1本でしょう。

 

◆4.バローロ・リゼルヴァ・アウダーチェ 2006/ ロベルト・サロット…モダン
美しいルビー色をしていますが、さすがに7年熟成されてるだけあり、ややオレンジがかってきています。
香りは、さきほどの古典派バローロと比べると目が覚めるような鮮烈かつエレガントな香りです。
当然樽由来のバニラやオークの香りが混ざっていますが、「モダン!」と意気込んで飲んだものの、そんなに激しく自己主張はせず、バランスがとれています。
どうやら熟成の製法として、
2か月ステンレス⇒2年フランス産樽⇒6か月ステンレス⇒6か月瓶
という、複雑な工程を経ているため、全体としてかなり落ち着いているようです。
味わいも、樽やアーモンド・ナッツ・スパイス系が特徴として表れていますが、いい感じですね。

個人的にはあまり樽の個性が強いワインは好まないのですが、これは美味しいです!
やはりいろいろ試してみることで新しい発見がありますね。

 

そして最後は
◆6.ヴァルテリーナ・スフォルツァート・メッセーレ 2001/ カーヴェン
です。

ちなみにこれが今日の出席者の中では一番の人気でした!

スフォルツァートとは、キアヴェンナスカ(ヴァルテリーナにおけるネッビオーロ種の呼び名)を3か月ほど乾燥させ、糖分を凝縮させてから圧搾して作る製法のこと。当然、できあがったワインは濃厚でアルコール度数の高いものに仕上がります。
(他に同様の製法として有名なものにアマローネがありますが、高い!)

味わいは…これはもう別格…でしたね。
なかなか言葉にはあらわせません。凄味すら感じさせてくれます。

このワインはモダンですが、01年ですのでもう12年寝ています。
「モダンワインは熟成しても美味しい!」
を証明するために作ったワインとのこと。
この情熱が口に含んだ時の凄味に感じられたんでしょうか。

 

しかし、ネッビオーロといっても製法によって全く味わいがかわりますね~。
ほんと不思議です。
これだけ味わいの振れ幅が大きいものは、メジャー品種でいけばサンジョヴェーゼくらいなものでしょう。

その中でも、今回ネッビオーロには独特の気品さが共通項として漂っていることを改めて認識しました。
ワインは世界中で作られていますが、ネッビオーロは北イタリアでしかできないのも不思議ですよね。
この味わいと存在意義について考えれば考えるほど、ますますネッビオーロの魅力にとりつかれてしまいそうです。

 

(シニアワインアドバイザーK)

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マリアージュ~映画とシャンパーニュ編~【by K】

こんにちは。Kです。

 

子供(5歳・♂)が寝た後の楽しみの一つが、録画してたまっていた映画を観ることです。
つい先日、やっと『ノルウェイの森』を観ました(いまさらですが。。)。
感想は・・・う~ん、全体の雰囲気はよかったですが・・・・
ああいう精神世界を映像にするのは難しいんでしょうね。
ただ緑役の水原希子さんはよかったです!まさにはまり役でした。

ただ『ノルウエィの森』は原作にしろビートルズの歌にしろ、ワインは重要な要素だと思っていたのですが、
それをあまりうまく使えてなかったのがちょっと残念。

 

ワインが重要な役割を演じている映画って、昔から結構ありますよね。
今回はarielがシャンパーニュのことを説明してくれていたので、シャンパーニュと映画のマリアージュについて書いてみたいと思います。

 

シャンパーニュと映画でまず真っ先に思いつくのは、『007シリーズ』(1953~・英)でしょうか。
ジェームスボンドとボランジェ、そしてボンドガールという組合せはまさに最強ですね。
気品と力強さをもつボランジェはボンドのイメージともぴったりきます。
ボンドは決してモエやヴーヴクリコではないですよね~。
味だけでいったらガティノワなんかも合いそうなんですが、マニアックすぎますね。

 

あとは『プリティウーマン』(1990・米)。
この映画を観てシャンパーニュと苺はあうのか!はやく飲んでみたい!とおもっていたのは中学生の時。
銘柄がモエだと認識したのは流石に成人してからですが笑。

で、当然苺とためしてみました!

けど、苺の種類が悪かったのか、苺の酸味とモエがケンカしてしまってる印象でイマイチ。
なんとなく中学時代からの淡い期待がボロボロっと崩れ落ちて・・・ほろ苦かったことを覚えています。
とはいえ、モエのもつ都会的なセンスはプリティウーマンにぴったりですよね。
対抗できるのは、ベッラヴィスタくらいかな(シャンパーニュじゃないです)。

 

ほかにもいろいろありますが、僕のNO1はやはり『カサブランカ』(1942・米)です。
この映画に出てくるシャンパーニュがマム・コルドンルージュであることはよく知られています。
(むしろF-1とのからみのほうが有名ですが)

映画の舞台は1941年の仏領モロッコの都市カサブランカ。第二次大戦の真っただ中。
このときすでにパリはドイツ軍により陥落・占拠されており、親ドイツの政権が樹立されていたため、カサブランカは仏領といってもほとんどドイツの支配下にありました。カサブランカは地理および交通網上ドイツの手から逃れようとアメリカへ亡命を希望する人々の中継地点となっていたため、ドイツ軍も厳しく監視をしていました。そんな場所でアメリカ人リック(ハンフリー・ボガート)は酒場を経営。
客はポン引きからスリ、アメリカへの亡命希望者でごったがえしてまさにカオス。
そんな酒場へリックのかつての恋人イルザ(イングリッド・バーグマン)が反ドイツのリーダー格ラズロとともに現れた。アメリカへ亡命するために。しかも二人は結婚していた・・・。
いまだにイルザを忘れられないリックは思わぬ再会に心が揺れまくる。リックもかつてはレジスタンスの一員として自由のために戦っていた闘士であり、ラズロの亡命を手助けしてやりたいとは思うが、愛する女性を奪われた男の嫉妬心がめらめら。そんなリックがとる最後の行動は・・・?
というのがざっくりしたあらすじ。

 

ちなみにマムは、自由のために戦っていた時分のリックと、当時恋人だったイルサとの思い出のシーンで登場します。
場所はドイツ軍の軍靴が迫る陥落直前のパリ。砲火の下、二人は仲睦まじくマムで乾杯(意外に余裕な感じ・・・)。

その時のセリフが、あの有名な

「Here’s looking at you, kid(君の瞳に乾杯)」

ですね。

 

どう訳したらこうなるのだろう??
これはもう日本語訳した人が天才としか思えません。
カサブランカは名台詞の宝庫ですが、ほかにもリックがある女性から言い寄られているときの台詞もすごい。

≪女≫「Where were you last night?(昨夜はどこにいたの?)」
≪リック≫「That’s so long ago. I don’t remember. (そんな昔のことはわからない)」
≪女≫「Will I see you tonight?(今夜会える?)」
≪リック≫「I never make plans that for ahead(そんな先のことはわからない)」

一度は言ってみたい台詞ですが、無理ですね。
しかも直訳したら一気にテンションさがります。

 

脱線しました。

ところで、なぜ二人が乾杯していたのがマムなのかというと(やっと本題・・・)。
マムの創業者はドイツ人で19世紀に創業しました。この華やかで洗練されたシャンパーニュは瞬く間にフランスやアメリカで人気ものに。
そんなおりに第一次大戦がはじまり、フランスは敵国ドイツの資本からマムをうばいとっちゃうんですね。
こうした背景のもと、二人は迫りくるドイツ軍を前に「ドイツ人がくる前にこいつ(マム)を飲んじまおう」と乾杯するわけです。製作者がここでわざわざマムをだす意図がよくわかりますよね。
映画とシャンパーニュの素晴らしいマリアージュだと思います。

あとは単純にアメリカ人・・・というかハードボイルドな人たちがマムを好きだったのもあるかも。
レイモンドチャンドラーの『ロンググッドバイ』にも、印象的なシーンでマムが登場していますし。

 

そのほかに個人的におすすめしたい、映画とシャンパーニュのマリアージュをご紹介します。

 

■『ティファニーで朝食を』(1961・米)×『ドンペリニヨン NV』
この映画は内容よりも冒頭のシーンとヘプバーンのファッション、ムーンリヴァーだけですでに不朽の名作です。
ティファニーとドンペリのイメージは全くあいませんが、ヘプバーン扮するホリーは見た目は派手で、男から金をまきあげながら生きている奔放な女性。が、その実はきわめて繊細でナイーヴ。ドンペリも派手なイメージが優先されますが、その味わいはまさにホリーそのもの。ラストの雨のシーンも、ドンペリのもつ高揚感が加われば最高のマリアージュとなります。

 

■『レ・ミゼラブル』(2012・米)×『アンドレ・クルエ ミレジム』
この映画、直近では一番好きです。
舞台はナポレオン没落後の激動のフランス。時代背景は際めて暗くジメっとしているが、そこを歌と音楽で巧みに観客をひきつける。
クラシックでありながら現代的要素をふんだんに盛り込んだこの映画には、ナポレオン軍の軍服のロイヤルブルーをあしらったアンドレクルエのミレジムをあわせてみたい。
ちなみにクルエは毎年ミレジムをだす珍しい生産者です。それも「個性は毎年違う。常にベストを尽くしたい」との思いから。
不屈の魂で暗い時代を生きぬいたジャンバルジャンと合わせるには最適でしょう。
さすがに映画館で飲みながら見るわけにはいかなかったので、DVDがでたときに試してみたいです。

 

さて、みなさんにはどんな映画とのマリアージュがありますか?
ぜひおしえてください。

 

(シニアワインアドバイザーK)

『レ・ミゼラブル』とあわせて飲みたい!
アンドレ・クルエ ミレジム